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2005年08月16日

LOHASアントレプレナー達がアメリカを変える!?(2002年8月)

Do you know LOHAS?

昨年ブレークした地域通貨は、カナダのバンクーバー島・コモックスバレーが発祥の地だが、お隣のアメリカ、コロラド州デンバー周辺にも新しいライフスタイルやそれをサポートする企業が続々と生まれていた。その新しいライフスタイルは"LOHAS(ローハス)"という。Lifestyles of Health and Sustainabilityの頭文字をとったもので、「ローハス」と呼ばれている。京都議定書も批准しない、CO2排出量も世界で最も多いアメリカに、そんなライフスタイルが生まれているなんて、にわかには信じがたい。しかし、最新の調査によればアメリカ全人口の30%がそのLOHASコンシューマーだというのだ。一体それはどんな事態なのか・・・!?と訝しく思っていたところ、デンバー郊外のブルームフィールドというところでLOHASの会議が開かれると聞いてさっそく参加してきた。その名も「第6回ナチュラルビジネス・マーケットトレンド・カンファレンス」。日本人の参加は、私が初めてだそうだ。栄えある一人目の参加となった!!

会議にはアメリカ各地から400名近くの参加者が集まっていた。参加費は3日で825ドルと決して安くはないが、アメリカの景気が停滞している状況下でも活況を呈していた。参加者はアメリカ全土を中心に、一部ヨーロッパからの参加もあった。今年のテーマは「LOHASマーケットで成功するために」である。

LOHAS誕生の経緯

LOHAS誕生の経緯をたどってみると、1998年に社会学者のポール・レイと心理学者シェリー・アンダーソンが新しい人々として「カルチャー・クリエイティブ」を提唱したことに端を発する。「カルチャー・クリエイティブ」とは、エコロジーや地球環境、人間関係、平和、社会正義、自己実現そして自己表現に深い関心を寄せる人たちである。推計によればその数は5千万人にのぼるという。ポール・レイとシェリー・アンダーソンは13年にわたり、10万人を超えるアメリカ人を対象としたアンケート調査、100以上のグループインタビュー、多勢の個別インタビューを通じて、この新しいグループ像を導き出した。必ずしもアメリカ人ではないが、具体例としては政治家ではトニー・ブレア、アーティストではジョージ・ルーカス、企業家ではアニータ・ロディック(ザ・ボディショップ創業者)といった具合だ。

そのころより金融業界からカルチャー・クリエイティブを対象にした企業への関心が高まってきた。その代表ともいうべき企業GAIAMは、独自にLOHAS(健康とサスティナビリティに配慮したライフスタイル)というコンセプトを開発し、家庭用品、衣料品、クリーンエネルギー商品など関連商品をセレクトあるいは独自に作ってウエブサイトを通じて販売するようになっていた。今回のナチュラルビジネス会議の主催者であるフランク・ランペ氏らは、GAIAM、金融関係者らと共に、LOHAS市場を広げることをテーマとしたプロジェクトを作り、まずLOHAS市場の対象ビジネス、商品を定義し、規模を算出した。99年の秋に実施したリサーチの結果、マーケットの規模は2,268億ドル(約30兆円)だった。この調査結果をふまえて2000年3月に「LOHAS ジャーナル」が創刊され、その年から会議のテーマは「LOHAS」となった。さらに2001年秋には消費者を対象とした調査が行われ、その結果が今年5月に発表されている。

今年発表された調査によって明らかになったLOHASコンシューマーは、単に環境に配慮するだけでなく、家族や地球の健康、さらには社会の将来にまで関心を持っている人々だ。社会正義、自然資源の保全、自己開発(personal development)、身体・マインド・精神・地球のウエルネスに関心を持つ。こうした価値観に基づいてブランドを選考し消費行動を行う。

LOHASアントレプレナー達

さて、会議に集まっている起業家たちは、自らもLOHASコンシューマーだと自称している。たとえば、無添加歯磨きなどオーラルケア製品で人気の「Tom's of Mine」(メイン州ケネスバーグ)。創業者のCEOトム・チャペルは、1968年に都市での企業生活を離れ、メイン州ケネスバーグに移り住み、妻のケートと共にナチュラル・パーソナル・ウエルネス・プロダクツの製造を始めた。「ビジネスの魂―利益と共益のために―」(The Soul of Business; Managing for profit and the Common Good )、「さかさまの経営―価値観に基づいたリーダーシップのための7つの意志―」(Managing Upside Down; The Seven Intentions for Values-Centered Leadership)という二冊の著作がある。ナチュラルビジネス界で敬愛されている経営者の一人であり、30年こつこつと同じビジネスを続け、2001年度の売上は35億円超になっている。

LOHASの生みの親ともなった「GAIAM(ガイアム)」(コロラド州ブルームフィールド)、母なる地球GAIAとI amを掛け合わせた会社名だ。1988年にジュリカ・リサビィ。LOHASコンシューマーを対象に情報提供、商品・サービスの販売を行う。WEBサイトを通じて環境に配慮した家庭用品、クリーンエネルギー機器、自己開発関連商品(ヨガのビデオなど)の販売を行うとともにオリジナル商品の卸売りを行っている。次々に価値観を同じくする小企業を買収し事業を広げている。サイト、カタログ+Web+店舗(全国21,000店でコーナー展開するほか、オリジナルショップも展開)というマルチチャネル販売で年商100億円超。E-ベイと並んでEコマースで利益を出している数少ない企業の一つだと言われている。

自らのライフタイルもLOHASであるアントレプレナー達が、次々にその創造性を生かして設立する新たなブランド群。利益の追求と同時に、サスティナブルな社会をめざそうという価値観に立脚してビジネスを走らせている。そして同じ志の企業同士で連携したり、事業を大手企業に売却し、その売却益で次のLOHASビジネスを始める、あるいは後進のアントレプレナー達の新ビジネスに投資をし、事業をサポートするというダイナミズムがそこにあった。

アメリカでも投資環境は全般的に冷え、IPO企業数も2001年以降低迷しているが、金融業界のLOHAS企業への注目は高い。わかりやすいビジネスとして、特に消費者を対象にしたナチュラルプロダクツ、クリーンエネルギー関連技術への少額の投資、価値観を尊重した投資が行われている。

自らをアイディアリスト(理想主義者)と称するLOHASビジネス関係者らであるが、利益と社会的責任の両立を果たすという価値観を様々な方法でじわじわとメインストリームに広げつつある。あと数年もすれば、LOHASコンシューマーたちがネットワークされ、バーチャルなコミュニティを形成し、新しい政治リーダーを選び、LOHASビジネスが台頭し、すっかりアメリカはサスティナブルな環境先進国になる。そんなシナリオが目に浮かんできた。


( NPO「JKSK」WEBサイトコラム「世の中を変えるのはあなただ」2002年8月掲載)

Writing: owadajunko

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