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2005年08月16日

LOHAS前夜 企業の社会的責任(CSR)とLOHASの源流

LOHASが誕生する前のアメリカ企業のCSRの取組状況とLOHASNの源流をたどってみました。

消費大国アメリカ、京都議定書を批准しない国アメリカで、LOHASが生まれたことを不思議に
思う方も少なくないのではないでしょうか。
LOHASの源流をたどるうえで、アメリカ社会における企業とNGO、生活者との関係を
知ることが鍵となります。

社会的責任(CSR)を考慮したビジネスという考え方は、公害等を生み出した大企業に対する
対抗概念として、1970年代にクローズアップされるようになりました。
80年代には、社会的責任を自らの価値観に取り込んだベンチャー企業が登場し、
90年代には大企業も自発的に社会的責任に取り組むようになってきました。
企業にこうした行動指針を示し、活動の後押しをしたのはNGOや生活者の発言と行動でした。
さらに、1990年代の終わりから、新しい価値観を持った消費者が認識されるようになり、
そうした消費者のライフスタイルをサポートする、持続可能な社会を目指すという価値観を持った
ブランドが次々に登場するようになりました。

1987年にアメリカで「ソーシャル・ベンチャー・ネットワーク(SVN)」が、
社会問題に関心を持つビジネスリーダー、起業家、研究機関、NGOによって、
それぞれの組織の活動を通じて、公正で人道的で持続可能な社会をめざして設立された。

2002年現在では会員数も400社以上にのぼっている。
会員企業には、ベン&ジェリー(アイスクリームメーカー)、セブンスジェネレーション
(家庭用洗浄剤メーカー)などベンチャー企業や、社会的責任投資機関、研究機関などが
名前を連ねている。

1993年にはヨーロッパにも「ソーシャル・ベンチャー・ネットワーク・ヨーロッパ(SVNE)」ができ、
ボディショップなどがその牽引役となった。社会的な問題の解決を志して起業する者にとって、
このネットワークに参加することで、同じ志を抱く他の経営者や専門家からアドバイスを得ることが
できるようになったのである。

また、CVNの活動の特徴として、会員企業による自主的な取組みを挙げることができる。
社会問題をテーマとしたキャンペーンや、会員企業間の提携・投資・事業開発などだ。

1992年にはソーシャル・ベンチャー・ネットワークの会員企業であるベン&ジェリー、
トムズ・オブ・メイン、パタゴニアなど、責任あるビジネスを実践する中小企業50社によって、
企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)を推進することを主な目的として
「ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ」(Business for Social Responsibility: BSR)が
誕生した。その目的は、ビジネスが利益をあげつつ社会的責任を推進するようになることだ。

現在では、コカコーラ、マクドナルド、ウオルマート、NIKE、GAP、J&J、リーバイス、Yahoo、
スターバックス、ディズニー、シェル、ダウケミカル、フォード、GM、GAIAM、アメックスなど、
ほとんどのアメリカの有名ブランドは名を連ねている。
会員企業の合計売上げは約2兆ドル、合計の従業員数は600万人という規模となっている。
年次国際会議には1,000人以上の企業の役員が参加するほど活況を呈している。

ヨーロッパ、イギリス、ブラジル、イスラエルに関係団体を持つ他、2002年6月17日には
アジアオフィスを香港に開設し、活動を世界に広げている。
BSRは今や大企業の社会的責任に関する活動の基準にさえなっている。

一方、LOHASが生れたコロラド州ボールダーには、地球環境問題や食糧問題に危機意識をもち
オルタナティブな生き方や事業を始めた人たちが点として存在していました。
現在「LOHAS会議」呼ばれている会議を始めたフランク・ランペらも、その一人でした。
それが、LOHASというマーケティングコンセプトが誕生することで、
全米の同じ価値観を持つ企業や個人、専門家をつなぎ、
LOHAS層やLOHASビジネスを顕在化させ、メインストリームとなったのです。
つまり、国の政策と地球環境の持続可能性に危惧する社会企業家が、ビジネスを通じて
環境問題を解決しようとした、これがLOHASの源流なのです。 


<英米を中心とした企業の社会的責任を推進する民間セクターの動き>

1987年 アメリカ/ ソーシャル・ベンチャー・ネットワーク(SVN)設立
1988年 イギリス/ 「ザ・グリーンコンシューマーガイド」出版
1989年 アメリカ/ 「ショッピング・フォー・ア・ベター・ワールド」出版
1989年9月 アメリカ/ CERES(Coalition for Environmentally Responsible Economies
              環境に責任をもつ経済のための連合)が
              「バルディーズ原則(現セリーズ原則)」を発表
1992年 アメリカ/ SVNが「ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ(BSR)」を設立
1993年 イギリス/ 「ソーシャル・ベンチャー・ネットワーク・ヨーロッパ(SVNE)」設立
1996年9月 スイス/ 国際標準化機構(ISO)、環境マネジメントシステムISO14000シリーズを制定
1997年 アメリカ/ グローバル・リポーティング・イニシアティブ
              (The Global Reporting Initiative :GRI)設立
1997年 アメリカ/ 第1回ナチュラル・ビジネス・マーケット・トレンド・カンファレンス開催
              (主催:Natural Business Communications社)
2000年 アメリカ/ ポール・レイ「カルチャー・クリエイティブ」出版
2002年5月 アメリカ/ 調査レポート「LOHAS市場を理解するために 
              LOHASコンシューマーの定義とビジネス」公表
              (Natural Marketing Institute, Natural Business Communications)

出典:論文「LOHAS市場におけるソーシャル・ブランド」より一部改訂
    『ビジョナリー・コーポレートブランド』(白桃書房)2003年1月

Writing: owadajunko

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