TOP » ビジネスLOHAS » 地域づくり

2006年06月25日

北海道芦別市、横市さん流LOHAS  -B&B、農地トラストなど-

ルピナスが群生する6月の北海道・芦別市に、『横市(よこいち)フロマージュ舎』の横市英夫さんを
訪ねてきました。札幌から車で約2時間の芦別市は、北海道のほぼ中央部で富良野市の隣に
位置しています。約865km2 と広大な面積を有し、その89%が森林原野で、山岳・丘陵が周囲を囲む
大自然に恵まれたまちです。かつて石炭産業で栄え最盛期には人口7万を超えていましたが、
1992年の三井芦別炭鉱の閉山を最後に全ての炭坑が閉山し、現在では約2万人まで激減しました。
地域経済の建て直しに取り組み、観光産業に力を入れています。

lupinus1.jpg

<家族のためのバター・チーズづくり>

『横市フロマージュ舎』のチーズやバターは、テレビ番組『どっちの料理ショー』の特選素材として、
また多くの雑誌でお取り寄せの逸品の一つとして紹介され、6万人を超える人に愛されてきたものです。
横市英夫さんは、1979年より独学でチーズ作りを始めましたが、
それは、「家族がおいしいと言ってくれるものをつくりたい!」という気持ちから始められたものでした。
森林の中の牧場で育った牛のフレッシュミルクと乳酸菌が作り出した純粋なバターとチーズです。
バターは、乳脂肪分93%。防腐剤代わりに0.7%程度の塩のみを加えた純度の高いものです。
百貨店などには置いていませんので、ネット通販や直接お電話して入手することができます。

yokoichi.jpg
クリーミーなカマンベールチーズ

P1011835.JPG
20数年前アメリカから輸入した住宅


<自然、そして農の再生のために>

農業の状況はどうでしょうか。芦別市でも減反政策、安価な輸入物の増加により、農家は生活を圧迫
されて離農し、開拓者たちが100年に渡り切り開いてきた田畑がどんどん荒廃していっていると言います。
一方で、消費者もポストハーベストや農薬を使用した輸入野菜よりは、国内の新鮮で農薬を減らした
農産物を食べたいと望む人が増えてきました。

仲間達と議論の結果、こうした状況の解決の方向性として次のようなことが導き出されました。

 ・国産の野菜の価格を下げるには市場や業者の中間マージンを省く
 ・農業を続けていくには安定した収入のため固定客が必要
 ・自然を守るには森に樹を植えたり、ダムにたまった土をとりのぞいたりすることが必要
 ・荒れた農地をよみがえらせるには、皆で農地を買い取って米や野菜を作り、後継者の育成として
  新規就農希望者を指導すること

こうしたことから、1998年にNPO法人北海道B&B協会(日本交流トラストバンク)は誕生しました。


<横市流B&B、農地トラスト>

NPO北海道B&B協会が最初に手がけた事業は、「B&B」です。ベッドとブレックファストの略ですが、
一般に広く理解されているB&Bは「朝食つきの一般家庭への宿泊」というもの。
ヨーロッパでは、農家の主婦らが現金収入源として、空いている部屋と朝食を旅行者に提供する宿泊
形態が広く知られています。日本でも昔は「一宿一飯」といって同じように旅人を泊める習慣がありました
が、人へのいたわり・ねぎらいが目的で、いわば無料の奉仕でした。

そこで、横市さんらは、登録したホストハウスに、ゲストの宿泊は無料で、交流に若干の費用を払うという
仕組みを考え出しました。協会に登録しているホストハウスは、農家というよりは“農的な暮らし”を楽し
んでいる、例えば家族のために持続可能な農業を行っている、ハーブガーデンを持っている・・・方などです。
ゲストはホストファミリーから地域の暮らしの楽しみ方などを教えてもらい、交流することができる。
まさにLOHASな旅ですね。

2番目が「農地トラスト」です。これは従来流通でかかっていた経費分を、農地の保全・回復や新規就農
支援のための資金としてまわしていこうというしくみです。私たちが農地トラストに参加して「お金(会費)
を払って安心・安全な農産物を受け取る」という行動をとることで、農地保全のための資金になります。
その対価としてお米を受け取るだけでなく、未来の農業や環境の保全をサポートすることができるのです。

このようなB&Bや農地トラストは、農村と都会の生活者、生産者と消費者の双方が参加・交流することで、
地域農業の振興や自然保護の活動を生み出し、離農の進む農村の地域活性化に貢献しているといえる
でしょう。


<自然に愛されている>

LOHASはとても重要なキーワードで期待していると横市さんはおっしゃいます。
「自分は特定の宗教を信仰しているわけではありませんが、”人間は自然に愛されている”
という実感を持つことが重要だと思っています。自然に愛され、生かされている。
だからその自然からもっと愛されたいから、自然に対して良いことをしようと思う。
そんな自然に愛されていることを実感できる機会をもっと作ろうと思っているんです。」と。

B&Bで”農的な暮らし”をしている人との交流によって、自然にふれあえる、
農地トラストで自分が会員となっている田んぼを訪問したり、
ダムに溜まった滋養分たっぷりの土をベランダガーデニングに使って美しい花やハーブを育てたり、
そんなこと通じて、自然に愛されているということを実感するきっかけになると言います。

自分や家族の健康のため、そして地球の健康・環境を思いやる心とでも言えるでしょうか。
「食や健康への関心から農業自給率やエネルギー問題まで広く考えるのがLOHASの重要なところ。
これからも色々な企画を企業の共感・協力を得て実施していきますよ。」
横市さん流のLOHASは、まだまだ色々なアイディアがありそうです。   (2006年6月23日取材)


B&Bで交流ステイ
http://www.bandb.jp/bb/index.html

農地トラスト
http://www.bandb.jp/trust/index.html

ダムの底にたまった土を活用するプロジェクト
http://www.cosmo-oil.co.jp/kankyo/farmtrust/index.html

※このダムの底にたまっていた有機成分をたっぷり含んだ土を、ガーデニング用の土としてモニター
 利用することができるそうです。お申し込みは上記サイトから。(2006年10月31日まで)

P1011828.JPG
この箱でダムの土(山の滋養をたっぷりと含んだ豊かな土)が届きます。

Writing: owadajunko

↑ページの先頭へ

関連書籍・メディア

お問い合わせ

企業・個人からの個別相談・コンサルティングを承っています。お問い合わせは下記フォームからお願いいたします。


ドキュメンタリー映画「幸せの経済学」