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2006年08月24日

地蔵盆 「京風ロハスな暮らし 連載第14回」 (8/20)

                ジャーナリスト 木下明美

京都の夏の終わりを告げる伝統行事は地蔵盆です。これが終わると朝夕は涼しくなり、
子供たちは宿題の仕上げに掛かります。

地蔵信仰そのものは平安末期からあり、中世には民間信仰となっていました。
子どもが親より早く死ぬことを逆縁と謂い、親不孝とされました。子どもこそ哀れなのですが、
賽の河原で石を積んで幼死したことを父母に詫びます。すると鬼がやってきて折角積んだ石塔を崩し、
子どもを虐めます。その子どもたちをお地蔵様が庇って下さるというのです。
地蔵盆では御詠歌を上げるところも多いですが、その「一つ積んでは父のため、
二つ積んでは母のため・・・」という地蔵和讃の哀調は涙無しでは聞けないものでした。

京都には大体町内に一体はお地蔵さんが祀ってあり、その前に町内の役員らがテントを張って、
ゴザを敷いたりイスを並べたりして子供を遊ばせます。そして,お寺から僧侶に来てもらって
お経も上げもらいます。ウチの町内の地蔵盆は8月19日に行われ、延命地蔵を祀っています。
私も今年は町内の副会長の役が当っているので朝から夕方までお世話をしました。

地蔵盆1.jpg

京都生まれ京都育ちのものによれば、町内ではお金を集めて福引きの景品を買い、
民家の二階から小さなゴンドラで景品が降りてくるのを子どもたちが目を輝かせて待ち受ける、
というのが以前の光景だったようです。

現在、ウチの町内は93戸。地蔵盆の対象者は乳幼児、小中学生、計13名。
そのうち遊びに来てくれたのは6名。世話役の大人の方が多いというさびしいものでした。
来月の敬老の日にはお祝い品を役員が持って伺うのですが、その対象者(70歳以上)は66名!

jizou2.jpg

少子化、塾・お稽古事、家で遊ぶ、などが原因でしょうが、高齢化が進んで子どもたちが数人しかいない
町内も珍しくありません。そういうところでは福引きの景品が家庭用品、台所用品になっている町内も
あります。そんなに形骸化しているのなら、いっそ廃止しては、ということになりますが、止める町内は
まずありません。伝統行事を絶やしたくない、自分たちの幼時の思い出の行事だ、将来また子どもが
増えるかも知れない、などの思いが地蔵盆の灯火をともし続けているのでしょう。
 
それどころか、京都郊外の新興住宅地では新たにお地蔵さんを建て、子どもに学校で肩身の狭い思いを
させたくない、伝統行事の由来を教えたいと、地蔵盆を始めるところもあります。

意外なところのお地蔵さんを紹介しておきましょう。一つは大丸百貨店の敷地内北東にあるお地蔵さんです。
日本を代表する百貨店で、1717年京都で創業ということもあり、地元とご近所を大事にしているのです。

daimaru.jpg

もう一つ、京都大学の中にもお地蔵さんがあり、農学部東隣の町内の子どもと役員は地蔵盆には大手を
振って構内に入れます。京大は「開かれた大学、地元重視」を力むことなく昔から実践しています。

   夕立の上りし夜道の其処此処に茣蓙(ござ)を敷きたる地蔵盆あり 
                          梅 隆

Writing: owadajunko

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