2006年08月11日
「蔵久」-信州・安曇野のゆったりとした時が育む、家族団欒の空間 (8/9)
8月の安曇野は青空と白い雲、穂をつけた稲の緑が、アルプルの山々に囲まれて、おだやかに広がっています。
そんな安曇野に昨年6月、新しい故郷(ふるさと)が誕生しました。それは、「蔵久(くらきゅう)」というカリントウ工房のある、食事やお茶をいただける空間です。
運営しているのは松本で三代続くカリントウの製造販売の会社、久星食品。
戦後、家族団欒に喜ばれるお菓子を何か作りたいと、現在の社長青柳良彦さんの祖父にあたる青柳伊佐雄さんがカリントウの製造を始めました。
二代目の安彦さんは工場を作り、カリントウを量産化、全国の小売り店・量販店等に並ぶようになったそうです。昭和30年代には、「エレガントなお菓子オレンジカリントウ」などを考案したり、会社案内パンフレットの撮影にネパールまで行くなど進取の気鋭に富んだ二代目でした。
そして、三代目の良彦さんは、カリントウを楽しむ時間・空間をもう一度提案したい、心の故郷を作りたいという夢を持ち、場所を探し始め、ようやく1年たってこの築200年の元造り酒屋だった古民家に出会ったといいます。
リノベーションのプロデュースに東京(表参道)のワイスワイスに協力を依頼。
建築家の橋本夕紀夫さんにより、古民家と現代のセンスが加味され、新しい団欒の空間・語りあう場としてよみがえりました。
蕎麦など食事も出す50人入る和座敷はエアーコンディショナーが入っていません。窓を開けて、安曇野の風を感じてほしいという理由からです。
今では地元長野県内はもとより、県外からも、カリントウのある心の故郷を訪問しようと、蔵久を目的に安曇野にいらっしゃる方も増えています。おじいさん・おばあさん、お子さん、お孫さんと親子三代でいらっしゃる方も多いそうで、おじいさん達は昔よく食べたおやつとして、お子さんやお孫さんは新しいお菓子としてカリントウを食べながら、家族三代でゆったりとした時間を過ごしていかれるそうです。
テーブルは酒樽のふたを再利用
正面入り口脇に風格のある梅の木があります。屋敷と同じ樹齢200年の古木です。
オープンする前はほとんど枯れかけていたそうですが、建物がリノベーションされ、多くの人が訪れるにつれ、今年の春には元気に花をつけたそうです。
家のオーナーである飯田家の94歳のおばあさまも家屋に住みながら、家が蘇り、多くの方が訪問されることを楽しみに見守っていらっしゃいます。
1976年に公開され大ヒットした映画「犬神家の一族」(石坂浩二主演)のロケ地でもありました。
現在の店舗は2000坪ある敷地の1/3ほどです。二期・三期とリノベーションの計画もあるそうで、味噌づくりの工房など、安曇野の生活文化を体験できるような場を創ろうとお考えとか。楽しみですね。
訪れた8月9日は満月。200年前も変わらぬ満月が蔵久の庭を月光で照らし出していました。
花林桃源郷 蔵久 http://www.kurakyu.jp/index.html
※ワイスワイスについては、『日本をロハスに変える30の方法』P107をごらんください。
※「蔵久」さんが信州ブランドアワード2006(主催:長野県デザイン振興協会)において
特別賞を受賞されました。おめでとうございます(2006年10月26日)
Writing: owadajunko