TOP » ビジネスLOHAS » 教育

2006年10月11日

LOHASは“今までの環境教育”とどう違うのか 

「総合的学習を創る」(明治図書)という雑誌の11月号はロハスを総合的学習に
どのように活かせるのか特集しています。

特集は
・国連大学副学長 安井至さんのインタビュー「次世代環境教育とLOHASが提起している問題」
・ロハス理解のキーワードとして、今までの環境教育、ライフスタイル、健康教育、食育とどう違うのか
・ロハスマインドでの授業のシナリオを考える
・ロハス-現場で生かせる先進的取り組み
など、多くの小中高校の先生や大学教授を中心に提案・提言がなされています。

安井先生は、インタビューで「日本版ロハスは、若干金銭的に余裕のある人をターゲットにした
商業主義に走ってしまったが、もともともLOHASは人間の生き方を見つめ直そうとして生まれた思想」と
おっしゃっていました。どうも学識者の間ではそのように見られているようですね。
私も企業の方を対象とした講演会などで、LOHASにはフェイク(偽物)とオーセンティック(正統)があって
オーセンティックLOHASを実践するには、まず経営者自身の価値観がLOHASでないとダメです、
などとお話ししています。これからもオーセンティックLOHASを広めていきたいものです。

その中で、私も「今までの環境教育とどう違うのか」というテーマで寄稿しました。


--------------------------
LOHASは“今までの環境教育”とどう違うのか 

<生活を起点とし、世界を考えるパースペクティブ>

LOHASについての理解を深めていただくために、講演やセミナーを各地で生活者・自治体・企業向けなど様々なセクターの方に対して行っている。その際に、LOHASの特徴として以下をお伝えしている。

・生活起点 → 世界・地球的視野 : 自分の生活を起点に、衣食住学遊といった生活のあらゆる場面を健康と環境配慮の視点から見直す
・日々の暮らしで、できることから始める : 日々の暮らし、買い物時など日常生活で実践できることから取り組む
・ライフスタイル→ワークスタイル、ビジネススタイルの見直し : 健康と環境に配慮した価値観・ライフスタイルから始まり、それはワークスタイルやビジネススタイルも見直す視点となる。
・精神性を重視 : 心の豊かさを重視し、精神性の向上を図る。
・将来世代のことを考える : 将来世代、他の生物、途上国の人々など他者とのつながりを自覚し思いやる。
・社会全体を造り変える : 最終的な目的は、持続可能な社会を創るため、新しい文化を創造するということ。

こうした生活から社会全般までに広がるLOHASの概念を学習してもらうために、3つの切り口があると思う。

一つは購買行動に関する教育、二つめは衣食住など各分野に関する教育、そして三つ目は持続可能性
に関する教育だ。

一つめの購買行動に関する教育であるが、LOHASが認知され(各種調査から認知度は国内で40%を
超えている)、共感が広かった理由の一つとして、消費行動との関わりが密接であることがある。
身近なお買い物を通じて、LOHASを理解・実践することを意図し、筆者はNPOローハスクラブのメンバーと
共に、本年2月にこども国連環境会議主催の、「JUNEC国際フォーラム2005 - 持続可能な開発へ向けた青少年会議」において、基調講演ならびにワークショップ『LOHASでThink, Act, Change -My Lohas Shopを創ろう』を実施した。

その内容は、東京都渋谷区の表参道エリアをフィールドにLOHASショップ見学の後、参加者が「LOHASなお店を作るとしたら?」というテーマでグループワークを行い発表し、地域通過”LOHASマネー”をもって実際にお互いのお店で買い物をし、投票でどのお店が最もLOHASだったか決めるというプログラムだ。
LOHASショップとして、自然派化粧品「ザ・ボディショップ」、フェアトレード「ピープルツリー」、自然食品店
「ナチュラルハウス」などをマップにして渡し、訪問してもらった。
参加者は小学生から中高生までと幅広かったが、約20人を5つのグループに分け、それぞれがショップ
見学の後、国連大学の会議室においてグループごとにお店を考えた。何を扱うお店で、どんな考え方で、どんな商品を並べ、どんな内外装のお店なのか、絵で描いてもらい、それを元に発表した。
有機栽培で作った野菜を原料としたファーストフードショップや、フェアトレード、自然化粧品、八百屋さんなどユニークで楽しいお店が沢山できた。

参加した学生からはこんな感想があった。
「一番楽しかったのは分科会。LOHASショップは何がLOHASなのかよく分からなかったけど、お店を見に行って、ぜんぜん違うお店でもLOHAS的な目で見ると共通点がたくさん見えてきた。」
「LOHASや持続可能な社会作りについての話を聴けてみんながよく考えていることに驚きました。私はこれからもっと環境について考えていきたい。」
日々の買い物という場面で、生活者が各自どのような情報を収集し、基準を持ち、判断し、購買するか、大きな影響力があることであり、LOHAS学習には欠かせないものであると考える。

二つめの各分野に関する教育であるが、例えば住生活を例に挙げると、家や学校で使っている家具、建物の木材を教材にとりあげる。どこの産地で育った何という種類の木を使っているのか、工法や接着剤等にはどのようなものを使っているのかといったことを調べることから始まる。
そして日本の森林、林業、世界の森林の現状、森林の果たす環境保全への役割などについて、近くの森などを例に調べ、話し合うというものだ。このように、衣食住遊など、各分野についての展開が可能である。

<ESD(持続可能な開発のための教育)はLOHASの推進・定着と密接>

そして三つめの、LOHASのSである持続可能性(サステナビリティ)に関する教育については、ESD(持続可能な開発のための教育/Education for Sustainable Development)が大きな関わりをもつものであると考える。ESDは、2005年から始まった国連の10年プロジェクトの一つであり、その意味は「持続可能な社会の実現を目指し、私たち一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、よりよい社会づくりに参画するための力を育む教育」(※1)である。
 
「ESDの10年」は2002年8月のヨハネスブルクサミットで日本のNGOと政府の共同提案の形で提案され、
同年12月の国連総会で決議された。1992年にリオ・デ・ジャネイロで開催された「国連環境開発会議」
(地球サミット)で採択された「アジェンダ21」第36章を具体的に推進する取組みとされている。その後、
2005年9月にユネスコが国際実施計画を策定、国内でも実施計画がまとまり、環境省によるESDモデル
事業が今年から始まっている。国内では2003年に推進会議ESD-Jが発足し活動を行ってきた。

ESDは持続可能性の基礎となる世代間の公平、地域間の公平、男女間の平等、社会的寛容、貧困削減、環境の保全と回復、天然資源の保全、公正で平和な社会など、環境、人権、福祉、開発など、あらゆる分野の教育を統合するものだという。そうなると、従来の環境教育の枠組みが拡大し、LOHASに関する教育と重複する部分もかなり多いと考えられるだろう。

※1.パンフレット「はじまる×はじめる ESD」(「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議 発行)

Writing: owadajunko

↑ページの先頭へ

関連書籍・メディア

お問い合わせ

企業・個人からの個別相談・コンサルティングを承っています。お問い合わせは下記フォームからお願いいたします。


ドキュメンタリー映画「幸せの経済学」