2006年12月12日
三洋電機のエネループ、”使い捨てないライフスタイル”の訴求でヒット
『日経エコロジー』1月号では、三洋電機を取材させていただきました。
野中ともよ会長自らお出ましいただき、昨年7月に新しいビジョン「Think GAIA」を
導入したことや、経営改革の骨子をうかがいました。
続いて、ご担当の方から新発想の充電池「エネループ」についてお話しをうかがいました。
エネループは今年の日経ヒット商品番付でも小結に格付けされていました。
ここでは、そのヒットの理由を読み解いてみたいと思います。
eneloop発売から1年経ち、売上げ実績は当初目標を上回り、累計で1500万個。
前年比では約2.8倍の売上となりました。単価の小さい商品ですから同社の売上に占める割合は
大きくはありませんが、「Thnk GAIA」というコンセプトに基づいた商品戦略に間違いはなかった
という確信が社内に広がりつつあると言います。
<「エネループ」の4P分析>
1.プロダクト : 1000回充電できる/充電池の従来の弱点を克服/洗練されたデザイン
プロダクツのUSP(際だった特徴)は、1本で1000回充電し、繰り返し使うことができるので経済的ということ、
そして従来の充電池の弱点を克服し、自然放電しにくく、いったん充電すると1年後でも85%を維持することができるということです。
また、そのデザイン性もこだわりのポイントでした。LOHAS層を意識して、洗練されたスタイリッシュな
本体のデザインはもとより、店頭に並んだ際にその棚が青く見えるよう、深海を思わせるブルーで
透明感のあるパッケージが目をひきます。今年のグッドデザイン賞の受賞もうなづけます。
2.プライス : 1本1円!?
価格は、単三電池2本と充電器のセットで約2,000円という価格ですが、1本1,000回充電できることを
考えると、なんと1本1円という金額になりますので、一世帯が年間に20本乾電池を購入するとすると、
100年分になってしまいます。
一回購入したらほぼ一生購入しないで済むという計算になりますから驚きです。
3.プレイス(販売チャネル) : 新チャネルでも販売
販売チャネルも従来とは異なるものでした。家電量販店はもちろんですが、コンビニやスーパーなど
従来充電池を扱っていなかったチャネルにもアプローチしたそうです。
4.プロモーション
プロモーションは、“1000回繰り返し使える充電池。使い捨てしないライフスタイル”をメッセージの中心に
据え、テレビコマーシャルや新聞・雑誌広告、WEBで行いました。
また、将来世代を担う子供達に直接伝えようと、全国250校に特別セットを寄贈し、30の小学校へは出前授業を行ったそうです。
実際にどんな人が購入しているのでしょうか。身近なところでも知り合いのカメラマンらが最近、
eneloopを使っているということをよく耳にしていましたが、同社の購入者アンケートによると、
購入者の半分は充電池を購入するのが初めての人だということがわかりました。
また、購入の理由は、「繰り返し使えてお得」「捨てる手間が省ける」などお得感、利便性が上位に
挙がっていますが、同社の目的であった“乾電池から充電池への切り替え”が促進されたことは
紛れもない事実です。
新しいビジョンの傘の元、LOHAS層を意識したマーケティングが成功した好例と言えるでしょう。
<LOHASポイント>
・電池のように従来デザイン性が考慮されなかったものまで、長期間愛用することを前提とした
シンプルでスタイリッシュなデザインに
・20世紀型の“先進国の人や企業が喜ぶ”から、21世紀型の“途上国の人や地球が喜ぶ“という
発想の物づくりへの転換
・従業員の価値観と会社の価値観が一致する時代に
Writing: owadajunko