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2008年04月25日

ロハスの故郷 ボールダーの横顔

先週もボールダーに行ってきましたが、改めて同市のまちづくりや、まちの特徴をまとめてみました。

LOHASが生まれたコロラド州ボールダーとは、どんなところでしょうか。
ロッキー山脈の麓にある、標高5,430フィート(1,655m)、面積27.8スクエアマイルという広さの市です。
自然豊かで全米で最も暮らしやすいまちの一つと言われていています。
高橋尚子選手などマラソン選手の高地トレーニングの場所と言うと、ああ、あそこですねという方も少なくありません。

LOHASの現状と今後について、「LOHASジャーナル」元編集長のフランク・ランペさんに、そして、ボールダー市の環境政策について、環境部マネジャーのジョナサン・コーエンさんにお話をうかがいました。


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ジョナサン・コーエンさん

人口は83,432人(2005年US Census)で、2000年の94,673人から約1万人減少していますが、それはまちの人気が上昇し、住宅取得価格や家賃が値上がりしたからだそうです。

その他の特徴としては
・白人比率86%(米平均75%)
・学歴 大卒以上70%(27%): コロラド大学や国の研究機関もあり、研究者や学校関係者が多く集まっています。ノーベル賞受賞者を4人(物理3人、化学1人)も排出するなど、高学歴者が多く住んでいます。
・職業 コロラド大学関係者が7,500人、ハイテク企業も少なくありません。
・世帯年収(ファミリーインカム) 平均75,945ドル(米平均55,832ドル)
・住居価格(所有) 457,400ドル(平均167,500ドル):住宅の取得価格も高いですね。


環境保全の歴史をひもといてみますと、
1967年から、「オープンスペースプログラム」を導入し、市がまちの周辺43,000エーカー(約1740ha)を、買い上げ、グリーンベルトにしています。
これは長年にわたる市民の活動によるもので消費税や寄付金など150百万ドル(約174億円)がこの費用に充てられました。自然を守ると共に市民に散策路として開放しています。

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市内に流れる小川沿いに自転車道路が整備。

1971年には、建物の高さ制限を行い、76年には人口抑制策を導入しています。

2002年には「京都議定書」を承認し、2004年には24%削減する目標を掲げています。

気候変動に対する市の行動計画として次の3つの取組を行っています。
 1.エネルギー効率を高める
 2.再生可能エネルギーへの転換
 3.自動車利用を減らす

昨年11月には、住民投票で「炭素税」を導入しました。一世帯あたり、一年で16ドル、法人で45ドルだそうです。

歩行者や自転車優先の街づくりがなされていて、自転車専用道路も整備されています。
公共交通機関としてはバスが整備されています。
まちの中心にあるパールストリートは歩行者優先ですし、ウオーキングや自転車通勤・通学をしている人が少なくありません。

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平日の午後

◆ナチュラルビジネス&アントレプレナーのセンター

ボールダーにはオーガニック農産物やそれを原料にした加工食品のメーカーが多く、ナチュラルビジネスのセンターとなっています。
北米最大のハーブティーメーカーのセレッシャルシーズニングの工場もあります。
創業者のMo Siegelさんや、LOHAS会議を始め、「LOHASジャーナル」の初代編集長だったフランク・ランペさんも、自ら「昔はヒッピーだったよ」と言っていました。

全米2位のオーガニック食品スーパーマーケットの「ワイルドオーツ」もボールダー発祥です。昨年、第1位の「ホールフーズマーケット」に買収されましたが、両店に行ってみると組織文化の違いを感じました。ホールフーズでは店内の撮影が禁止ですが、ワイルドオーツはどこでも撮ってくださいと言われます。
ワイルドオーツの方が親しみやすい感じがします。確かに、地元に住んでいる人も、ホールフーズに行くときは化粧をして、着替えて行くと言います。一方のワイルドオーツも最近できたお店は、内装や品揃え面でホールフーズに近づこうとしているように見うけられました。

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ワイルドオーツから転換したホールフーズ(2008年4月撮影)

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昨年はワイルドオーツでした(2007年4月撮影)

ボールダーでは、さらにナチュラルビジネスを振興していこうと、「ナチュラリーボールダーキャンペーン」を2005年から始めました。毎年10月に開かれていますが、2日間の会議と展示会などが行われています。

◆スピリチュアリティのコミュニティ

前述のフランク・ランペさんによれば、ボールダーにはスピリチュアリティのセンターでもあるといいます。自然が美しく、アウトドアやアスリートをはじめ代替療法の専門家やヒーラーなども各地から移り住んできました。
チベット瞑想センターもあり、ダライ・ラマも来訪するなど、スピリチュアリティに関心を寄せる人が少なくありません。

◆歩行者優先のゆったりした商業エリア  パールストリート&29st

ボールダーにある商業施設は、まちの中心街「パールストリート」と、一昨年秋にオープンしたショッピングセンター「29stモール」が代表的です。

パールストリートモールは、地元の商店を重視し、カフェや街路樹も配され歩行者優先の居心地の良いスペースになっています。昔建てられた映画館を保存していたり、まちの歴史を大事に人中心のまちづくりをしています。

29th ストリートモールは、以前あったSCを取り壊し、新しく作られたオープンモールのSCです。核店舗がメーシーとホームデポで、ライフスタイルセンター型のSCです。
オープンモールで、ショップが並び、レストランや映画館もあります。

◇29th Street Mall  http://www.twentyninth.com/

専門店では、「nau」というファッションブランドの一号店もあります。
このブランドのCEOがLOHAS11に登場し、ブランドの説明を行っていましたが、再生ポリエステルやオーガニックコットンなど、環境に配慮した素材を使いつつ、デザインは都会派のアッパーカジュアルで、メンズとレディースが揃っています。
店頭でワンピースを購入しましたが、その場で価格の5%を環境・社会問題に取り組むNGOに寄付することができます。
インターネットで購入すると5%割引になるなど、様々な工夫をしています。

◇nau http://www.nau.com/

【まち(ボールダー)のLOHASポイント】
・自然保護や環境問題対策、商業施設に関する住民参加型の方針・計画・基準がある
・自転車専用道路や公園など自然を生かしたまちの快適性を高める施設がある
・歩行者優先の商業エリアなど、人中心のまちづくり
・商業エリアに地元の商店を多く配置するなどまちの個性を大切にする

Writing: owadajunko

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