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2008年06月03日

石見銀山の生活文化、暮しをデザインする「群言堂」

『ロハスビジネス』共著者の水津陽子さんと石見銀山&「群言堂」さんに行ってきました。
服飾雑貨メーカー「群言堂」については『ロハスビジネス』(P175)に水津さんが書いてくださっていますが、代表の松場登美さんは、ここ石見の古い町並みの中で暮しながら、田舎の暮らしにこだわった物づくりをされています。

今回は、江戸時代の武家屋敷「阿部家」を改修した家に泊めていただきました。

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大森のまちに蘇った「阿部家」


◆ 世界遺産 石見銀山のあるまち

群言堂のある、石見銀山は昨年世界遺産に登録されたことで、一躍その名を知られるようになりましたが、島根県大田市大森町は人口430人の小さなまちです。
出雲空港から車で90分、あるいはJR山陰本線大田市駅から車で20分ほどのところです。銀山が活況を呈していた江戸時代には、20万人が住んだといいます。
銀山川に沿った街道には、武家屋敷や神社などが点在し、江戸時代の面影が残っています。

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杉の壁板の塗料は柿渋、ベンガラ、炭

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石州瓦の屋根

群言堂は、松場登美さんが夫の大吉さんと協力してつくりあげたもので1981年に「BURA HOUSE」と名付けた和風パッチワークのポーチやエプロンを制作・販売したことから始まりました。

87年には「石見銀山の地域性を売る」ことをコンセプトに据え、地元の主婦やおばあさんが作った草履や竹かごや生活道具、パッチワーク製品を扱うことになっていきました。

89年に小売とショールームを兼ねた本店を石見銀山通りにオープン。
94年には町のイメージに合った、落ちついた大人の女性の服、日常着とお出かけ着という二つのラインの「登美」シリーズもスタートしました。

※群言堂 http://www.gungendo.co.jp/
  

◆ 古い武家屋敷を改修し、暮らしの場に

そして、98年に「株式会社 石見銀山生活文化研究所」を設立。「石見銀山でのものづくりを原点に、生活をデザインしていく企業をめざすと同時に、企業活動を通じて、志を同じくする人たちと土地の文化を創っていきたい」と。

さらに、銀山の古い武家屋敷や民家を買い取り再生に着手していきました。
石見銀山本店、群言堂(ろうそくの家と呼ばれ、交流・イベントスペース)、かやぶき屋根の鄙舎(本社敷地内にあり、イベントや社員の休憩室として利用)、ワークステーション(本社)、「竹下家」(古民家、社員寮)、そして築230年の武家屋敷である「阿部家」の6軒。

いずれも廃墟同然に傷んでいたものを、大幅に改築し、新しい命を吹きこみ、暮しの場として蘇っています。単なる見学の場でないところが素晴しい。

5月の今は新緑が本当に美しく、朝はほととぎすやうぐいすの声で目が覚めます。
泊めていただいた「阿部家」は、今年からは宿としての活用も始めているそうです。裏に銀山川のせせらぎ、表は銀山通りです。小さい中庭を囲んで、母屋、食堂、蔵を改装した広間、ベッドのあるゲストルームなどから構成されています。寝室は蔵の二階、洋室に改修され、ベッド2つのツインルームに。パジャマや寝具は、全て群言堂オリジナルの商品で、とても気持のよいもの。

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蔵の二階は洋室に

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中庭に面したライブラリー

阿部家の広い台所にはかまどが3つあります。ダイニングテーブルは廃校になった小学校の階段の手すりを材料にしています。
中庭にはギボウシ、雪ノ下、クレソンなどが植えられています。いずれも、天ぷらやサラダでいただくこともできます。

夕食には、柿の葉やみょうがの天ぷら、生麩の田楽、ド鍋で炊いた豆ごはんなどなど、季節の地元のもの中心に、登美さん自らも作ってくださって、感激です。家庭料理だから、とおっしゃいますが、地元で取れる季節のものを、素材を活かした料理がなんといってもご馳走だと感じます。一緒に飲みながら食べながら、まちづくりのことや、これからのことなど色々お話させていただきました。

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台所にはかまども

最も感激したのは和ろうそくの灯された浴室でした!湯船は木製、庭のハーブ(ミント、ローズマリー)を湯にうかべ、浴室内には和ろうそくが灯されて。キャンドルバスです!雰囲気抜群です。

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浴室。和ろうそくの炎は大きい

翌朝の朝食は天気の良かったので裏庭のテラスでいただくことに。朝日があたり、美味しく気持のよいことこの上ありません。

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テラスでいただく朝食

このように、松場登美さんの田舎暮らしから生まれた「群言堂」というブランドは、単に和テイストの服飾雑貨の提供にとどまらず、田舎の持つ様々な資源を活かした生活文化、ライフスタイルの提案をしているのです。そして不便な場所だからこそ、行きがいのあるエリアです。

石見銀山の観光ブームとは一線を画した、継続性のある、暮しをデザインする暮しを楽しむ、という発想で事業を行っていきたい」と松場登美さんは語ってくださいました。(2008年5月23日訪問)

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松場登美さんと筆者


※群言堂 http://www.gungendo.co.jp/   

Writing: owadajunko

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