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2008年11月17日

二地域居住や農への関心が高い働く女性

「イー・ウーマン」の円卓会議で二地域居住や農をテーマに一週間議論を展開しました。

最終的には「二地域居住したいですか?」YES274人(51%) NO266人(49%)という結果になりました。NOと答えている人の中にも農的な生活を施行している人や、すでに田舎暮らしをしている人もかなりいて、このテーマへの関心の高さがうかがわれました。

限界集落を再生させているNPO

今年も沢山の方との出会いがありましたが、その中でも、とっても興味を持ったのが、住まいを都会から田舎に移し、田舎を拠点に都市と農山村の交流事業を行っているNPOを運営している方や、20代で「半農半X」という暮らし方を始めている方や、家族で夫の故郷に移住して新規就農したという方でした。

二地域居住の第一歩、“都市農山村交流事業”を山梨県北杜市須玉町の限界集落“増富”地区で展開している「NPOえがおつなげて」(http://www.npo-egao.net/)の活動をご紹介しましょう。
代表の曽根原久司さんは現在46歳。かつては東京で経営コンサルタントをしていましたが、今から13年前、バブルがはじけ、これから時代は大きく変わると、自ら山梨県北杜市白州町に夫婦で移住。無農薬で自給用の米や野菜をつくり、地域の別荘族に薪を宅配したり、都市に住んでいる人の農山村体験を事業するなど仕事を創っていきました。そして、今から5年前、活動の拠点を“増富”地区に移しました。

“限界集落”とは、過疎と高齢化で存続が危ぶまれている集落のことで、65歳以上の高齢者が住民の50%以上で、冠婚葬祭など社会行事の維持が困難になっている集落です。そこには、耕作を放棄されている農地や空き家が沢山あります。国土交通省の調査によると2006年4月時点で全国で約7,900あり、2,641集落は今後、消滅の可能性が高いとも予測されています。日本各地にこうした集落があるということです。

その限界集落の一つである“増富”地区で曽根原さんは、都会から農業ボランティアを募り、遊休農地の開墾をしたり、親子を対象とした農業&田舎体験プログラムを行ったり、最近では企業のCSR活動を誘致し、社員とその家族に農業を体験してもらう活動も始めています。働く女性の参加者もけっこう多いそうですよ。その結果、ナント3haの遊休農地を再生させたというのです。面白い活動だと思いませんか? すっかり私は彼の活動に興味を持ってしまい、今年、5回も現地に足を運びました。電車とバスを乗り継いで……

日本の農業を応援するという視点

この限界集落「増富」で、今年、三菱地所がCSR活動を始めたと聞き、CSR部の寺坂琴美さんにお話をうかがいました。寺坂さんはCSR推進部に異動して2年半。5歳と8歳のお子さんを持つワーキングマザーです。一年ほど前、次のCSR活動は”都市農山村交流”をと考え、NPOえがおつなげての活動を知り、現地に足を運び、そこで活動することを決めたと言います。自らも親子で参加できる「こどもファーム」という、自分達で植えた無農薬・在来種の大豆から、味噌づくりするプログラムに参加しました。「参加して改めて、スーパーで安く売られている農作物や加工品に疑問を感じるようになりました」と。

夏には社員とその家族がバスツアーで現地に行き、農業&自然を楽しんだり、秋には遊休農地の“開墾”も行ったそうです。「無心に草を刈り、スコップで根を掘り起こしていると無の境地になり、1時間ほど皆で開墾した場所は、ふと顔を上げて改めて廻りを見渡すと空間がぐっと開け、非常に達成感がありました。先祖代々受け継がれた大切な土地を復活するお手伝いが少しできたように感じました」と感想を聞かせて下さいました。三菱地所では、来年「丸の内の畑in増富(仮称)」という、同社が運営するビルに入居している企業やお店、レストランにも声をかけて、都市農山村交流活動の輪を広げていく構想だそうです。このように企業がCSR活動として農や都市農山村交流活動を始めることが、今年に入って増えてきているのです。

※三菱地所社会貢献活動 親子バスツアー「里の夏を遊びつくそう」
  http://tourism-univ.net/report/social/mitsubishi_csr/0808_01.html

さて、円卓会議の読者の皆様からのご意見にもありましたが、近年畑を借りて野菜づくりをする人が増えているように“農的暮らし”への関心が高まっています。一方、日本各地の農山村は高齢化・過疎化が進んでいて、あと10年もすれば農業の担い手がさらに減ってしまうと言われています。どうしますか、日本の農業!? 二地域居住や田舎暮らし、あるいは農山村を訪問する際に、地元の農業を応援する活動についてです。日本の農山村を盛り上げていくために、ひいては自分や子どもの食や自然環境を守るために、都会に住む私たちに、また田舎に住んでいても農業に従事していない人たちに、何かできることはないでしょうか……

そんな問題意識から、12月に開かれる国内最大のエコ展示会「エコプロダクツ展」に合わせて、シンポジウムを企画しました。題して「新・上流社会への招待 ―都市農山村交流で創る持続可能(LOHAS)な社会」(http://tourism-univ.net/class/special/20081020.html )です。NPOえがおつなげての曽根原さんや、経済産業省の審議官、活動に取り組んでいる企業の方をパネリストにお呼びしています。

安全な食、豊かな農山村・自然は私たちが守る

一週間に投稿された意見を元に二地域居住に関してまとめてみると、平日は便利な都会で、週末は田舎で野菜を作ったり自然と親しんだりするというライフスタイルですが、その過程で、田舎の農業の現状を知り、地元の人と交流が始まり、ボランティアとしてかかわったり、農産物を購入するなどサポートするようになる人も少なくないようです。
また、50代以降は、田舎に拠点を移したい、60代で元気なうちは、季節によって住まいの場所を変えるというご意見もありましたね。

そして、農業分野や農山村で新しいビジネスを創ってみてはという意見もありましたが、都会でキャリアを積んだ30代、40代の人が出身地に戻り、農業関係の事業を始めたという話も、最近よく聞きます。NPOえがおつなげてでは、今年「えがおの学校」(http://www.npo-egao.net/noshoko/index.html)という、都市農山村交流事業のコーディネーターを育成する講座を始めましたが、都市に住む大学生、起業家、団塊世代で事業を始めたいという人、田舎で農業に従事している人など、約40人が参加しているそうです。同団体は国の新しい制度や法律も色々と活用して、様々なチャレンジをしていますので、ぜひその活動にご注目ください。

私からの提案は「自分たちの安全な食、豊かな農山村、自然は私たちが行動することで守ることができる」ということです。私たちの暮らし方や、買い物の仕方、商品の選び方で世の中を変えることができる、持続可能な社会を創ることができるのではないでしょうか。そのために、

・二地域居住や田舎具暮らしを通じて、自然とふれあうと共に、農山村の現状に関心を持つ
・毎日の買い物で、国産の、地域の農産物を選ぶようにする
・農産物生産者や農山村を支援する組織に入会する
・会社のCSR部や新規企業で都市農山村交流活動を提案する

都市ではファーマーズマーケットなど、交流イベントが開かれ人気を集めています。「東京朝市 ファーマーズマーケット」( http://www.earthdaymarket.com )が11月22日、代々木公園で開かれます。近郊の農家に新規就農した人たちが集まり、自らが作った農産物を販売しています。直接話のできる良い機会です。私も出かけてみようと思っています。

Writing: owadajunko

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