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2009年05月27日

カーボンオフセットをきっかけに、森と人とのつながりを促す「モアツリーズ」

人と地域と地球の健康はつながっていて、そのつながりを回復させたいと願うライフスタイルがLOHASだ。私自身、“地域を元気にする”ということに興味を持つようになり、各地の農山村を歩くようになった。特に限界集落といわれている高齢化・過疎化が進み、耕作が放棄された農地が点在する農山村を訪問するようにつれ、こうした地域を元気にする鍵が“都市・農山村交流”にあると確信した。遊休農地を都市の人たちが協力して開墾し、種を蒔き、再び畑へと戻していく。そして、近隣の森林に入り、間伐や植林などを行う。土や、風、木々の緑、森林から湧き出る清流は、とりわけ都市住民を癒してくれる。そして、地域の人たちも元気になっていく。そんな姿に心が打たれた。

そうした森が持つ水源涵養や生物多様性などの価値や、森の再生によるCO2の吸収に着目し、CDMに準拠した独自の基準に従って森づくりを進めているのが一般社団法人モアツリーズ(more trees)だ。キャッチフレーズは「都市と森をつなぐ。もっと木を増やそう」だ。


坂本龍一さんのライフスタイルから始まった

モアツリーズの代表理事は坂本龍一さんだが、海外出張の多い坂本さんは、飛行機によるCO2の排出を色々なカーボンオフセットサービスを利用してオフセットしてきたという。また、古来より森を失った文明は全て滅びたという歴史に学び、文明を支え、CO2を吸収してくれる木を大切にし、世界各地の森を再生させたいとの思いから活動を発案したという。

まずは、2008年3月、高知県檮原(ゆすはら)村で森づくり事業が開始された。檮原村は、高知県の西部に位置し、人口約4,000人、森林が91%(うち杉を中心とした人工林が75%)を占める林業の町だ。檮原村森林組合は2000年10月に日本で二番目のFSC認証を取得している。森が吸収するCO2を定量化し、第三者機関による評価を経てカーボンクレジット(排出権)を創出している。


モノやツアーとも組み合わせて

事務局長の水谷伸吉さんは“地域とつながる3つのステップ”を挙げる。1つめが「空気でつながる」。すなわちカーボンオフセットだ。森林の空気感が肌感覚で伝わることが、森への関心のきっかけになるという。2つめが「モノでつながる」で、間伐材グッズなどだ。深澤直人さんデザインのベンチや、USBフラッシュメモリー、ステーショナリーなどグッズを開発・販売している。そして3つめが「現地とのつながり」で、エコツーリズムなどで現地を訪問し、地域の人と交流し、森や自然に触れるというものだ。 

初年度の2008年、檮原村由来の211トンのカーボンクレジットは、坂本さんのCDやJ-WAVEの番組、日本テレビの番組収録を始め、坂本さんが登場するコクヨの広告や、トーハンによる書籍の流通、全日空のエコツアー、コスモイニシアの社員旅行のオフセットなどに採用された。小口で、多くの人に、色々な機会を通じて伝えたかったという。この3、4月には坂本さんのツアーが全国22か所で開かれ、35,000人が参加した。コンサートチケットには一人につき1kgのオフセットを付け、缶バッチがプレゼントされた。都市に住む35,000人が、森に思いを馳せた瞬間だ。

二年目の今年は、北海道の下川町の2000haをはじめ、国内外で5か所にまで対象の森が広がる。国内の森を活用したJ-VERによるカーボンオフセットを本格的に導入する企業の登場が楽しみだ。
(2009年5月取材)

Writing: owadajunko

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