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2009年07月13日

田んぼの生きものの賑わい ―身近な生物多様性-

最近、「生物多様性」という言葉を見聞きすることが増えたと思いませんか?来年10月に、生物多様性条約第10回目締約国会議(COP10)が愛知・名古屋で開催されます。それに向けて各界で徐々に関心が高まっているところです。
企業の環境報告書などにも、自社の事業と生物多様性の関連について記載するところも増え始めています。工場の建設や原材料の調達に際して、その地域の生物多様性に配慮しているかどうかといったことです。

もっと身近にこの「生物多様性」を感じる機会はないだろうか・・・と常々思っていたところ、金曜から今日まで長野県飯島町で開催された2泊3日の「アグリ・ネイチャー・スチュワードシップ養成ビジネススクール」という研修に参加する機会を得ました。まさにこの合宿は日本の農山村のどこにでもある、田んぼや畔の生物多様性を実感するものでした。

アグリ・ネイチャーとは“農業自然”で、スチュワードシップとは“番人”という意味です。
そして、生物多様性とは“生きものの賑わい”と言い換えるとわかりやすいと思います。

長野県飯島町は1000ha農地がありますが、“持続可能な農場”として4つの法人によって運営されています。前回訪問したのは5月の上旬で、山には未だ雪が残っていましたが、7月中旬の今回は、色々な野草が咲き、田畑には稲や黄金千貫(こがねせんがん)という焼酎の原料になる芋の苗が青々としていました。果樹園では栗の花が終わり、小さな実をつけ始め、ブルーベリーが実りの時期を迎えていました。

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研修は「アグリネイチャーいいじま」で開催。地元の高校生が植えた稲

※5月レポート http://soratsuchi.com/owada/2009/05/npo.html

今回の研修は、この持続可能な農業の計画作りに長年かかわってきた松木洋一先生(日本獣医生命科学大学名誉教授)が代表理事を務めるアグリネイチャースチュワード協会によって主催されました。プログラムは、手作り太陽光発電パネル作りに始まり、田んぼの生きもの調査、田んぼや畔の植物調査、ビオトープ作りなど実習と座学が交互に行われるというもの。アグリビジネスの経営者による、革新的な農法についてのセミナーや、ビジネスアイディアを考える時間もありました。そうそう、最後には試験も(汗)。

参加者は30~50代後半、生産者というよりは、アグリビジネスや企業で農業関連の新規事業を検討している方、農的活動に関心を寄せている方など十数名と、昨年までの卒業生が参加し行われました。

田んぼの生きものは賑やかで

「田んぼの生きもの調査」を指導して下さったのは宇根豊さん。福岡でNPO法人「農と自然の研究所」の代表理事を務めています。元々は農業改良普及員で、1978年より「減農薬運動」を進めてこられた。『田んぼの学校』や『「百姓仕事」が自然を作る 2400年目の赤とんぼ』といった本の著者でもあります。

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指導は宇根豊さん

全員で20分ほど、田んぼに入り、色々な生きものを発見しました。裸足で、ゆっくり歩いて、水中や水面、稲もじっくり眺めて生きものを探します。男性陣は子供時代に還ったように、ワイワイやっていましたが、私もスゴク楽しみました。

田んぼの100㎡の範囲に25種類の生きものがいました!

【害虫】
1.稲水象虫
2.稲ツト虫
3.イナゴ
4.笹キリ
5.泥負い虫

【益虫】
1.秋アカネ 
2.殿様ガエル
3.越年糸トンボ 
4.ノシメトンボ
5.ショウジョウトンボ
6.シオカラトンボ
7.黄糸トンボ
8.菊月子守グモ
9.足長グモ
10.雨ガエル

【ただの虫】
1.コオイムシ(子負い虫)
2.ミズカマキリ
3.ヤチバエ
4.チビゲンゴロウ
5.ベニシジミ
6.ヒメジャノメ
7.ゴマフガムシ
8.ミジンコ
9.ユスリカ(アカムシ)
10.コガタノミズアブ

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ただの虫 ミズカマキリ

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ただの虫 コオイムシ。卵を背中にしょってますね

この三つ目の分類の“ただの虫”が重要なんだそうです。害虫や益虫は稲にとって害か益かという視点で分けているので、いうなれば稲作への“有用性”で害か益かのラベルを貼っているわけです。そして、“ただの虫”は薬にも毒にもならないもので、これこそが、生物多様性、その自然の豊かさを物語っているのです。

生きものの種類を数え終わったら、「また会おうね」と声をかけて、田んぼに返してあげます。人に別れを告げるときと同じです。「See you again. また会おうね」

また、敷地内のビオトープには前回話に聞いてどうしても実物をこの眼で見たかった1円玉大の赤い「ハッチョウトンボ」も、ついにその姿を見ることができました。まだ走りということで数匹でしたが、嬉しいものです。
晩に同じビオトープに行って見ると、わずか数匹でしたが蛍も飛んでいましたよ。

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赤い影がハッチョウトンボ。どうもピントが合いません

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実際はこんなトンボです。雄が赤い(アグリネイチャースチュワード協会提供)

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敷地内のビオトープ。ここにも沢山の生きものが

続いて12日は、田んぼや畔を歩き野草を観察しました。そのレポートはまた後日。(7月13日)

アグリネイチャースチュワード協会

Writing: owadajunko

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