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2010年02月24日

【速報】 新しい協同が創る有機的資本主義 「地域がささえる食と農 神戸大会」(速報)

2/20~21に神戸で開かれた有機農業の関係者が集まる国際会議に参加してきました。

ゆきづまった資本主義の次の社会経済モデルを、すでに世界各地でその萌芽のある”地域が支える食と農”の実践例を通じて模索しようというものがこの会議のテーマです。

※会議のスケジュールは http://kobe2010.net/jp/index.html

有機農業を広めようと尽力している関係者が国内外から800人位集まって、大盛況です!
生産者、研究者、消費者、活動家などを始め、・・・大地をまもる会、毎日アースデー、消費者の会などなど埼玉県小川町からは金子美登さん(NPO全国有機農業推進協議会 理事長)がご参加です。


◆ 日本発。世界に広がるCSA

日本で始まった”提携”がアメリカやフランスではCSAと呼ばれて広がり、都市生活者と近郊の有機農家を直接つなぎ、特にリーマンショック以降のアメリカでは、急増しているそうです。

日本で提携を 30年以上前から行っているお一人が、金子さんです。農薬や化学肥料を使わず、じっくりつくった土で育った野菜。有機農家を支えよう、そして自分と家族の安全で美味しい食を支えてもうらおう。生産者と消費者の"提携"というスタイルです。野菜は定期的に届けられ、それに消費者は支払うというものですが、金子さんの場合は"お礼制"と言って、値段は消費者が決めます。「心をこめて手塩にかけて育てた野菜に値段をつけるなんてできない」、と金子さんは思っているのです。

この"提携"という、生産者と消費者が支え合う関係を提唱したのは、「日本有機農業研究会」を創設した一楽照雄さんで、1977年の雑誌掲載された「生産者と消費者との提携・十箇条」という原稿ががあります。その第1条にはこう書かれています。


第1条 「生産者と消費者の提携の本質は、物の売り買い関係ではなく、人と人との友好的付き合い関係である。すなわち両者は対等の立場で、互いに理解し、相助け合う関係である。それは生産者、消費者としての生活の見直しに基づかねばならない。


金子さんは数十軒の消費者と提携関係にありますが、お付き合いも二十年、三十年と長く、親戚のようなおつきあいです。人間関係も有機的なんですね。

"提携"は、日本で生まれ、80年代初頭には"TEIKEI"として欧米に紹介されました。アメリカではCSA(コミュニティ・サポーテッドアグリカルチャー)、フランスではAMAPなどと呼ばれ、定着しています。自治体単位で行っているところもあり、いずれもローカル(地域)で農産物は地産地消されています。
行き過ぎたグローバル経済に対して、ローカル経済をもっと大事にしよう、という考え方でもあります。

CSAはアメリカやカナダでは、新規就農者の方達が始めることが多いようですが、それは、いきづまった資本主義の次を模索するような取り組みであり、国内からも新しい取り組が報告されていました。

※昨年6月にカンザス州でのCSAを視察した際のレポート
http://soratsuchi.com/owada/2009/07/post-5.html


◆ 地力の回復から始まった欧。社会運動として始まった日本

日本の有機農業は元々、1971年に
・反公害:公害による食品汚染や農薬による農民の病気
・反市場主義:食べ物を商品にしない。消費者の選択の対象にしない
・新協同組合主義:消費者と生産者が支え合う関係を作ろう 
・自己批判:これまでの暮し方、考え方を反省
という4点から始まったのですが、

その後、生産者と消費者の直接的な取引である”提携”が始まりました。
互助、互恵の関係です。
金子はそれを「緊張感のある親戚関係」と呼んでいます。


◆ 開催地神戸(兵庫県)では環境共生型農業を導入

神戸会議には800人を超える人が集まりました。日本全国・世界各地から生産者、消費者、行政関係者、消費者が参加。報告の中には、兵庫県の取組みもありました。兵庫県では、8年後のH30年には環境共生型を全農地の75%に広げようというチャレンジングな目標を掲げています。

H19年現在、
・「環境共生型農業」(農薬や合成肥料は慣行の3割減)全農地の内8.7%
・「ひょうご安心ブランド」(半減)1.66%(816ha)
・有機農業0.33%(165ha)

これを、8年後のH30年には環境共生型を全農地の75%、安心ブランド20%(10,000ha)、有機を2%(1,000ha)にしようというです。
兵庫県豊岡市で成功した「コウノトリ育む農法」(環境共生型農業)を昨年春から県全域に広げようと、取り組が始まっているのです。

自然のコウノトリが絶滅したのが1971年、その同じ年に日本で有機農業が始まり(日本有機農業研究会発足)、そして2005年にコウノトリは再び空を舞い、2006年に「有機農業推進法」が施行されました。

※コウノトリ育む農法 http://soratsuchi.com/owada/2009/08/post-6.html


◆ ”新協同時代”の到来

交流会では金子さんとお話をしていたのですが、金子さんは神戸会議の前日まで韓国に視察に行ってらしたそうで。韓国では、農協と生協が合併して一つの協同組合を設立するということが始まっているそうです! まさに、生産者団体と消費者団体の融合です。

「霜里農場」を始め、こうした各地・各国での取り組は、地域が支える食と農が作る「有機的資本主義」が出現し始めているということなのではないでしょうか。


Writing: owadajunko

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