2012年02月06日
「なんと里山元気塾」始まる(富山県南砺市、2012年2/2~)
◆2mを超える積雪の中、50人が参加
先週(2月2日)から、富山県南砺市で「なんと里山元気塾」という、地域を元気にする企画を地域の参加者の方たちと一緒に考える塾が始まりました。第1回は公開講座ということで、私が「アグリ・コミュニティビジネス」をテーマにいくつかの事例を、早稲田の岡田先生が「地域のための再生可能エネルギー」と「緑の分権改革」についてお話させていただきました。
なにしろ、数日前から豪雪が続き、当日も飛行機は欠航もしくは飛んでも途中で東京で引き返すだろうということで名古屋まで新幹線で行き、そこから高山行きのJRバスに乗ることに。こういう悪天候のときは列車よりバスの方が強いと地元の方の意見。途中渋滞があったものの、なんとか会場に到着。東京駅から会場まで6時間半かかりました。
会場の外は大雪警報!
五箇山は山里です。2mを超す積雪で大雪警報も出ているほど。そんな悪天候・悪路の中を南砺市内はもちろん、富山や大阪からいらっしゃった方もあり、約50人が参加されました。私たちもせっかく集まってくださった皆様に、これからの連続講座に興味をもっていただけるような話をしなければと気合を入れて。久々に“新・上流社会”というキーワードを使い、実際川の上流には宝が沢山あるので、上流社会と呼んでいます。
岡田先生の話はいつもユーモアがあって、「これからは株より赤カブ」とか「太陽光発電を阻害するのは屋根の上の猫ですね」などと、笑いを誘います。ちなみに赤カブは南砺市の特産品でもあり、赤カブの漬物やお料理が有名です。これからは赤カブや再生可能エネルギー関連に投資(市民出資)した方が、株より利回りが良い!という発想です。
2回目以降は毎回会場を変え、講義・ワークショップ、そして翌日は有志でフィールドワークをしてお宝探偵(地域資源の発掘)をしようという趣向です。
合掌の家「吾郎平」での懇親会。「三笑楽」と岩魚の刺身
◆フィールドワーク 雪の合掌集落を歩く
翌日の五箇山は朝から晴天。積雪が朝日を受けて輝いています。こういう景色に会うと、その地域に歓迎されているという気持ちになります。昨年11月に来た時は2日間共雨でしたので、ようやく地域から認められたのかもしれません(笑)
まずは、雪の菅沼集落を歩きましょうということで、県道の歩道から集落や道沿いの“雪持林(ゆきもちりん)”を撮影。この集落は平成6年~重要伝統的建造物群保存地区に。平成7年には「世界文化遺産」 にも登録されています。菅沼集落は五箇山ICから車で2分という好立地です。気候の良い時期は毎日大型観光バスでたくさんの観光客が来ます。
2月3日は合掌の家々がライトアップされ、大勢の人出で賑わったそうです。
雪持林(ゆきもちりん)
※五箇山菅沼集落 http://www.city.nanto.toyama.jp/webapps/www/section/detail.jsp?id=284
集落には現在12棟の家屋があり、そのうち9棟が合掌造り家屋です。こんな山奥に大きく立派な合掌づくりの家があったということは、しっかりした産業があった証拠ですね。何を生産していたのかといえば、江戸時代は和紙や養蚕、鉄砲の火薬の原料である「塩硝(えんしょう)」をつくっていたそうです。
急傾斜の屋根。雪下ろしも大変!
◆北陸唯一の種麹店「石黒種麹店」
http://1496tanekouji.nanto-e.com/index.html
続いてうかがったのは南砺市福光にある種麹店です。明治28年に創業し、現在の当主が4代目(石黒八郎さん)ですが、麹の素を作る種麹店は全国に10軒ほどしか無いそうで。麹は味噌、醤油、清酒など醸造食品をつくるときに使用されるものですが、これほど日常的に私たちが食べているものの素を扱うお店が10軒とはさびしいですね。
江戸中期の建物。「石黒種麹店」
「リフォームできなくて、建物は江戸中期のままです」などジョークが飛び出す石黒さんです。甘酒をいただきながらお話をうかがいました。
話題の「塩麹」については「板麹と水と塩で簡単にご家庭でつくれますよ」とお話しても、実際に手作りされるのは10人の1人、ということで要望が多く、満を持して昨年11月に発売されました。250g入り650円とお手頃です。スーパーから注文が相次いでいるようです。私も2つ買いました。
「板麹」の実物を初めて見ましたが、これも販売(1折、840円)しています。
「板麹」を手にする石黒さん
◆板金工場が地ビールで第二創業「城端麦酒」
http://www.jo-beer.com/
もう一軒訪問したのは地ビールの製造所「城端(じょうはな)麦酒」です。板金工場をされていましたが、新規事業をということで2001 年5月に製造免許を取得し醸造を開始されました。当時19歳だった息子さん(山本勝さん)が工場長として製造を担当し、現在「はかまエール」、「麦やエール」、女性向けの「Sakura」、「楓」などを販売されています。
地ビール(地発泡酒含む)醸造所は全国に206ほどあるそうです。(2011年12月28日現在http://www.kitasangyo.com/BEER/beer_index.htm )各地で第三セクターで数億円かけて立派な工場をつくったものの、赤字から脱却できず製造を中止したという話も時々耳にしますが、「城端麦酒」さんは等身大です。初期投資は1200万円程度だそうで、10年を超えて堅実に業績を伸ばしています。
ちょうど訪問した際に山本さんが作っていたビールの原料の麦や黒米は地元産のものだそうです。その麦汁を飲ませていただきましたが、甘くて驚きました。
2007年には「国際ビール大賞」で「俺の味」がライトエール部門金賞、2009年「俺の黒」がダークエール部門金賞を受賞するなど、評価も高まっています。市内をはじめ、首都圏のバーなどでも販売されています。
麦汁の甘さにビックリ
「なんと里山元気塾」次回は2月28日、城端です!
Writing: owadajunko